2007年 04月 20日
Du と Sie |
ドイツ語を全くご存知ない人の為に説明すると、ドイツ語では英語のYouにあたる言葉が2つある。1つは「Du」で、友人同士や家族間、子供相手に使うもので、もう1つは「Sie」で、他人や目上の人に対して使う。Duが「きみ」でSieが「あなた」、と訳すよりも、Duを使うとタメ口、Sieを使うと敬語といったほうが日本人にはぴんとくるだろう。いろいろな方のブログなどで、ドイツ語が話せる人でもあまりDuを使う相手がいないとなんでも「Sie」ですませてしまうという話を読んだことがあるが、それは、Sieに対する動詞の活用形が原形でありそちらのほうがすぐに浮かぶからだろう。それに、Duを使うと失礼にあたることは多々あるが、Sieを使っておけば丁寧すぎることはあっても無礼にはならない。
例を1つあげると、動詞「持つ」の原形は haben (英語のhaveと似てるでしょ)
あんたは持ってる → Du hast (ドゥ ハスト)
あなたは持っています → Sie haben (ズィー ハーベン)
Duを使うときの動詞は "st" ストっていう音がするのが特徴。
私の場合は、今までドイツ語を聞く機会があった狭い世界では、常にまわりで話されているのはDuのみ。だいたい、自分に話しかけられる時はDuだし、よく耳に入ってくるのは誰かが子供や親戚相手に話しかけているところばかりだし、簡単な絵本もDuで書かれているし、何度もくりかえし見た子供向けDVDもDuだった。日本で知り合うドイツ人は誰もが英語がとてもお上手なので私の片言ドイツ語を使う必要もなかった。だから、ドイツ語がさほどできない私にも、Du+...stという音はいやでも自然に身につく。Duの相手としゃべるだけならいいのだが、突然他人と話すことになっても、ついDuがでてしまう、ということが時々あった。たとえば、レストランのウエイトレス(ドイツのウエイトレスは怖そうに見える人と本当に怖い人がいる)にむかってお願い事をするときは当然敬語をつかわなくてはならないのだが、つい「Kannst du ~?」といってしまい強面の顔がさらにひきつったという身も凍る経験がある。あとから気付いて夫に「さっきのやばかったかなあ」といったら、「大丈夫、君は見た目にもドイツ語が全然できないとわかるから、単なる間違いだとわかったみたいだよ。」
でも、相手が公職(特に警官)だと、Duを使うと侮辱罪が成立することもあるというから怖いよ。テレビを持っていない私の生きたテレビガイド tvhutteさん のブログで紹介されていたが、公の場でわざとDuを使うとどういう反応が返ってくるか?を実験するテレビ番組があったそうだ。
タメ語実験
こちらでも紹介されているが、Dieter Bohlen(元ミュージシャンで今は音楽プロディーサーとして大成功している辛口コメントが売り物の若作りの男性タレント52歳)は、誰に対してもDuで呼びかけ態度がバカでかい。警官をDu呼ばわりして侮辱罪で訴えられたが、「この人は誰に対しても無礼で、特に警官を侮辱したわけではない」という理由で訴えは取り下げられたそうだ。芸は身を助くじゃないけど、悪癖身を助く、だね。
私が2月にフランクフルトの都心で心身共にあまり調子がよくなかった1つの理由だったかもしれないとあとから思ったのは、Duだけの親しい人にかこまれた世界から一転いきなり話す相手は誰もがSieという1ヶ月を送ったことだ。日本語にたとえてみるなら、親しげにタメ口をきける相手に囲まれて暮らしていたのが、一転して1ヶ月間誰ともタメ口をきけずに「敬語だけ話してなさい」と強いられるかんじだ。買い物するのも、各種手続きをするのも、電話で問い合わせするのも相手は他人。すべてSieの間柄の人だ。慣れてくると、Sieと呼ばれるとなんだか丁寧に扱われているような気がしたり、自分が心をこめてSieで話すと相手に尊敬の念が伝わったりと、Sie生活も悪くはないのだが、「Duで人に親しみをもって話しかけたい」という隠れた欲求があったのかもしれない。ドイツでは、親しくなってから「さあ、今日からDuで呼び合う仲になろう」という申し出の儀式(Anbieten)を通過しないとDuの仲にはなれないんだそうだ。(ちょっと大袈裟か?)
DuとSieのように、二人称の「親称」と「敬称」の区別があるのはスペイン語やフランス語も同じで、なにもドイツ語に限ったことではない。私の個人的体験だが、スペインではTu(ドイツ語のDu)がUsted(ドイツ語のSie)より一般的によく使われていた。たとえば、大学附属の語学学校でも先生が初日に「私のことはTuでよんでね!」といっていたし、(ドイツで同じシチュエーションは想像できますか?)よく行く店の店員も、初めて紹介された人も、道で話しかけられただけの他人もみんなTuだ。ついでに言えば、たまたまバスの近くに座った人同士などが旧来の友人みたいにTuで長々とおしゃべりしている光景はスペインでは日常茶飯事だった。同じスペイン語でも南米はちょっと様子が違うようだ。日本で知り合ったあるペルー人は、家族ぐるみの付き合いで冗談も通じるほどの仲になっても私を「Usted」と呼んでいた。「なんでー、私達友達なのにUstedを使うの?」と聞いたら、「自分はこういうふうに育てられた。敬意をこめて女性のことはUstedとよぶんだよ」といっていた。なんか丁寧に扱われて嬉しいような、くすぐったいような気がしたものだ。
英語はいいよね、大統領も、上司も、先輩も、友人も、子供も、使用人も、全部Youで話しかけられるのだから。
例を1つあげると、動詞「持つ」の原形は haben (英語のhaveと似てるでしょ)
あんたは持ってる → Du hast (ドゥ ハスト)
あなたは持っています → Sie haben (ズィー ハーベン)
Duを使うときの動詞は "st" ストっていう音がするのが特徴。
私の場合は、今までドイツ語を聞く機会があった狭い世界では、常にまわりで話されているのはDuのみ。だいたい、自分に話しかけられる時はDuだし、よく耳に入ってくるのは誰かが子供や親戚相手に話しかけているところばかりだし、簡単な絵本もDuで書かれているし、何度もくりかえし見た子供向けDVDもDuだった。日本で知り合うドイツ人は誰もが英語がとてもお上手なので私の片言ドイツ語を使う必要もなかった。だから、ドイツ語がさほどできない私にも、Du+...stという音はいやでも自然に身につく。Duの相手としゃべるだけならいいのだが、突然他人と話すことになっても、ついDuがでてしまう、ということが時々あった。たとえば、レストランのウエイトレス(ドイツのウエイトレスは怖そうに見える人と本当に怖い人がいる)にむかってお願い事をするときは当然敬語をつかわなくてはならないのだが、つい「Kannst du ~?」といってしまい強面の顔がさらにひきつったという身も凍る経験がある。あとから気付いて夫に「さっきのやばかったかなあ」といったら、「大丈夫、君は見た目にもドイツ語が全然できないとわかるから、単なる間違いだとわかったみたいだよ。」
でも、相手が公職(特に警官)だと、Duを使うと侮辱罪が成立することもあるというから怖いよ。テレビを持っていない私の生きたテレビガイド tvhutteさん のブログで紹介されていたが、公の場でわざとDuを使うとどういう反応が返ってくるか?を実験するテレビ番組があったそうだ。
タメ語実験
こちらでも紹介されているが、Dieter Bohlen(元ミュージシャンで今は音楽プロディーサーとして大成功している辛口コメントが売り物の若作りの男性タレント52歳)は、誰に対してもDuで呼びかけ態度がバカでかい。警官をDu呼ばわりして侮辱罪で訴えられたが、「この人は誰に対しても無礼で、特に警官を侮辱したわけではない」という理由で訴えは取り下げられたそうだ。芸は身を助くじゃないけど、悪癖身を助く、だね。
私が2月にフランクフルトの都心で心身共にあまり調子がよくなかった1つの理由だったかもしれないとあとから思ったのは、Duだけの親しい人にかこまれた世界から一転いきなり話す相手は誰もがSieという1ヶ月を送ったことだ。日本語にたとえてみるなら、親しげにタメ口をきける相手に囲まれて暮らしていたのが、一転して1ヶ月間誰ともタメ口をきけずに「敬語だけ話してなさい」と強いられるかんじだ。買い物するのも、各種手続きをするのも、電話で問い合わせするのも相手は他人。すべてSieの間柄の人だ。慣れてくると、Sieと呼ばれるとなんだか丁寧に扱われているような気がしたり、自分が心をこめてSieで話すと相手に尊敬の念が伝わったりと、Sie生活も悪くはないのだが、「Duで人に親しみをもって話しかけたい」という隠れた欲求があったのかもしれない。ドイツでは、親しくなってから「さあ、今日からDuで呼び合う仲になろう」という申し出の儀式(Anbieten)を通過しないとDuの仲にはなれないんだそうだ。(ちょっと大袈裟か?)
DuとSieのように、二人称の「親称」と「敬称」の区別があるのはスペイン語やフランス語も同じで、なにもドイツ語に限ったことではない。私の個人的体験だが、スペインではTu(ドイツ語のDu)がUsted(ドイツ語のSie)より一般的によく使われていた。たとえば、大学附属の語学学校でも先生が初日に「私のことはTuでよんでね!」といっていたし、(ドイツで同じシチュエーションは想像できますか?)よく行く店の店員も、初めて紹介された人も、道で話しかけられただけの他人もみんなTuだ。ついでに言えば、たまたまバスの近くに座った人同士などが旧来の友人みたいにTuで長々とおしゃべりしている光景はスペインでは日常茶飯事だった。同じスペイン語でも南米はちょっと様子が違うようだ。日本で知り合ったあるペルー人は、家族ぐるみの付き合いで冗談も通じるほどの仲になっても私を「Usted」と呼んでいた。「なんでー、私達友達なのにUstedを使うの?」と聞いたら、「自分はこういうふうに育てられた。敬意をこめて女性のことはUstedとよぶんだよ」といっていた。なんか丁寧に扱われて嬉しいような、くすぐったいような気がしたものだ。
英語はいいよね、大統領も、上司も、先輩も、友人も、子供も、使用人も、全部Youで話しかけられるのだから。
by raquel_2006
| 2007-04-20 00:58
| ドイツ語